敷地は栃木県宇都宮市の南側に位置する壬生町安塚である。かつては壬生城を中心に城下町が広がり、安塚はその郊外に位置し古墳が多い地域であることから「八つの塚」に因んだ地名と聞く。たしかにこの辺りを車で走ると、田んぼの中に隆起した古墳らしき小高い築山を多くみかける。建主が生まれ育った母屋とクリニックが建つ14,000㎡程の敷地は、その殆どが林である。
本計画は、新たに取得したこの林の北側に隣接した土地に戸建て住宅を建てる計画だ。主な要望は次の4つである。
・平屋であること
・蒐集している美術品を鑑賞するスペースを作ること
・建主と母のための2つの個室を備えること
・ドッグランを設けること
8月初旬の猛暑の中、初めて敷地に訪れると、隣接する林は濃い緑が生い茂り足元には奥行きのある暗さが広がっていた。その樹木の高さと厚みに魅力を感じながら敷地を歩き回り、この林とどのような関係を築くべきかが主たる課題になると感じた。
様々にプランを検討した結果、南面する居室を東西方向に並べ、東側にガレージと納戸を隣接させたオーソドックスな平面が選ばれた。東西に長い屋根の軒先を低く下げ、水平性の強いビューを得る方法もあったが、暗さが際立つ林の足元だけをフレーミングすることに違和感を覚えた。逆にどの居室からも高木とその上の空を望めるよう、建物を敷地の北側に寄せて林と距離をとり、奥行きの大きい居間とキッチンのあたりの屋根をめくりあげるように持ち上げて奥のキッチンからも林の上部までが視界に入る空間とした。
また、屋根の東側のガレージと納戸のエリアについては、太陽光パネルを設置するスペースとして、発電効率を上げるべく南側に傾斜させた。中央付近で緩やかに湾曲し、東側端部で折り紙のようにシャープに折れる屋根となった。屋根の形状を考慮すると、それを支える構造部材は小さなメンバーでピッチを細かくすることで湾曲する部分に馴染ませてゆく方針が好ましい。89本の105角材を垂木として東西に303mmピッチ並べ、屋根を構成した。
住宅の入り口や動線には、少しだけスペースに余裕を設けてギャラリーのようなスペースとし、各室には絵を掛けるのにちょうど良い壁を配置している。住まい全体に建主が所有する美術品が配され、南面に広がる林と様々に関係し合う空間で、豊かな生活が送られることを期待している。
| 住所 | 栃木県下都賀郡壬生町 |
|---|---|
| 敷地面積 | 903.63 |
| 建築面積 | 171.91 |
| 延床面積 | 163.77 |
| 用途 | 住宅 |
| 階数 | 地上1階 |
| 構造 | 木造 |
| 最高高さ | 6.316m |
| 用途地域 | 第一種住居地域 |
| 建ぺい率 | 60% |
| 容積率 | 200% |
| 構造設計 | 坂田涼太郎構造設計事務所 |
| 設備設計 | 添田建築アトリエ |
| 施工 | イケダ工務店 |
| ランドスケープ・その他 | 高橋 |
| 撮影 | Takumi Ota |